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【リレー小説】そろばん教室 久保塾で過ごした日々 [転載禁止]©2ch.net

1 :1:2015/04/07(火) 18:45:51.02
みんなでリレー小説書こうぜwww
とりあえず、タイトルだけつくってみたw

そろばん教室 久保塾で過ごした日々

です。
あとはみんなで適当につなげてください。

特にジャンルなどは決めていないので、お好きなように。
過去に出た設定は無視しないでね。(展開で、過去の設定をつぶすのはあり)


【ルール】
・名前欄に通し番号を振る
・通し番号がかぶったら、先にアップした人の内容を優先して、粛々と進める
・1度書き込んだら、その後6時間は書き込み禁止
・できるだけ、同じ人が連続で書き込むことのないように
・小説以外の書き込みは控えてください
・sage進行です。

※もしかしたら実在の団体や人物と同名になるかもしれませんが、実在のものに迷惑がかからないようにしてください。
※そんなわけで、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

2 :1:2015/04/07(火) 18:46:20.95
まずは中心となるものの名前・設定を決めます。
設定はあらかじめ決めすぎるとつまらないので、最初の事典では簡単で大丈夫です。

2→舞台となる街(地域)の名前、設定

3→塾の設定

4→主人公の性別・名前

5→主人公の悩み


6、7、8→主要登場人物の設定


9からストーリー開始

誰が書いてもいいんで、みんな仲良く、転んでも泣かないということでよろしくです。

3 :2:2015/04/08(水) 13:57:17.76
2→舞台となる街(地域)の名前、設定

東京・スカイツリーが見えるあたりの街で、

理由は私の住んでるあたりなので

4 :3:2015/04/08(水) 16:38:57.35
3→塾の設定

元教師のおじさんが個人経営で行っているそろばん塾

5 :4:2015/04/09(木) 01:33:08.20
4→主人公の性別・名前

 男
 ジョニー鈴木

6 :5:2015/04/09(木) 08:29:51.48
5→主人公の悩み

そろばんより暗算が得意 教室に通う意味がない

7 :6:2015/04/09(木) 10:21:45.54
6→主要登場人物の設定

久保 真理央

塾長。大阪出身。
「大阪では常識や」「神戸みたいやな」が口癖。

8 :6:2015/04/09(木) 10:37:37.81
6→主要登場人物の設定

久保 真理子

塾長の妻。旧姓高橋。
久保と結婚することで名前がほとんど一緒になってしまうことが理由で結婚することを3年間も躊躇する。
生粋の東京の下町育ち。

大阪が苦手で巨人ファン。巨人阪神戦があるたびに夫婦仲がちょっと険悪になる。
「大阪では常識や」
という言葉にいちいちつっかかる面倒なおばさん。

9 :7:2015/04/09(木) 11:12:52.70
>>8
すみません、8の書き込みは通し番号7ということでお願いします。

10 :8:2015/04/09(木) 18:03:59.63
8→主要登場人物の設定

小此木 華
そろばんの実力が高く、全国大会で3位になったことがある。

11 :7:2015/04/10(金) 08:49:43.95
7→主要登場人物の設定

藤村裕司
そろばんはからっきしだが、阪神ファンということで塾長に気に入られている

12 :1:2015/04/10(金) 13:06:14.86
ちょっとよくわからなくなっているので、
主要登場人物は、出た4人全員採用ということにします。

・久保 真理央
・久保 真理子
・小此木 華
・藤村裕司

これで、以降9より物語を始めてください。

また、sage進行(E-mail欄に「sage」と半角で入力して書き込む)でお願いします。

13 :9:2015/04/11(土) 19:07:21.61
ジョニー鈴木はそろばん教室に向かっていた。
放課後のことだ。
学校生活は毎日すごく楽しい。
しかし、そろばん教室はつまらない。
暗算が得意だからだ。
そろばんがなくても計算結果が分かる。
「フラッシュ暗算をやりたいな」
そう思っていたら、そろばん教室に着いた。

14 :2:2015/04/11(土) 22:28:02.74
なぜ自分はそろばん教室に通っているのだろう、
などとどうでもいいことを考えて久保塾の扉を開けると
いきなり声を掛けられた
「おはようジョニー」
小此木華である。
帰国子女の天才ハーフ、ジョニーも彼女のことだけは認めていた。
彼女がいるからジョニーは面白くもないそろばん教室に通っていたのだ。

15 :11:2015/04/12(日) 19:46:10.13
「華ちゃん、おはようじゃないよ。こんばんはだよ」
ジョニー鈴木はやんわりと訂正する。
帰国子女の小此木はまだ、日本のあいさつがよくわかっていないようだ。
「そっか、もうすぐ夜だもんね」
その無邪気な微笑みに、ジョニーはメロメロだ。

16 :12:2015/04/13(月) 11:38:34.29
「大阪やったらおはようでもええで」
塾長の久保だ。
昨日阪神が飼ったからか、陽気だ。
この先生は大阪の常識をやたら押し付けてくる。
本当に大阪の常識なのかも怪しい。
「はよ教室に行けや。大阪なら常識や」
大阪でなくても東京でも常識だよ、そう思いながらジョニー鈴木は頷いた。

17 :13:2015/04/13(月) 13:41:56.85
 さて着席したジョニーであるが、暗算マスターである彼にとって授業はつまらないものである。
 そろばんを使うよりも脳味噌を使った方が手っ取り早い。
(そろばんなんか、こうやって机の上をシャーってして遊ぶぐらいしか活用方法が思い付かないよ)
 やれやれだ。
 溜息を吐いたジョニーはロクに授業も聴かず、そろばんを机の上でシャーシャーやって遊んでいた。
 すると……、

18 :2:2015/04/13(月) 23:24:58.95
「何してんねん!」
久保にゲンコツをもらった。
「何してんだよ!」
ジョニーもぶっきらぼうに言い返す。
久保はジョニーの口調が気に入らなかったようで、
「そこは『何してんねん!』って言うところやろ!
したら『何で同じこと言うねん!』って突っ込めるやないかい!」
と大阪のノリを持ち出してきた。

19 :15:2015/04/14(火) 10:58:11.22
「せやで! 何してんねん! って言うで!」
遅れて教室に入ってきた藤村裕司だ。
「おお! 昨日、阪神勝ったな!」
久保もうれしそうだ。
しばらく2人で阪神の逆転タイムリーの話をしていた。
小此木華とジョニー鈴木は目を合わせた。
「いつも楽しそうだね」
小さな声で話しかけてくる小此木はとても可愛らしかった。

20 :1です:2015/04/14(火) 13:03:43.76
>>18
名前欄は「2」ではなく、通し番号でお願いします。

21 :2です:2015/04/14(火) 22:03:05.44
>>20
申し訳ございません。以後気を付けます

22 :16:2015/04/15(水) 11:02:36.52
思わずにやけてしまいそうになるジョニー鈴木だったが
クールを気取って冷静に
「そうだね」
と言った。
この小此木華の無邪気な声が何とも言えない。
他の児童たちは、黙々とそろばんを叩いている。
そこで久保田真理子の声が、雰囲気をぶち壊した。

23 :17:2015/04/15(水) 16:39:08.74
「ねぇ、いつも皆、真面目に頑張ってるから……今日は私がご褒美を用意してきたのよ!」

教室に入ってくるなりそんな声を張り上げた、塾長の妻、久保 真理子。
そして生徒の机の上に「巨人頑張れまんじゅう」という、要は巨人のロゴマークが捺された饅頭を置き始める。
巨人信者で阪神嫌いな彼女は、昨日阪神が勝った事で気が立っていたのだ。
つまりは八つ当たりに近い行動である。
華は饅頭を見詰め小さく「はぁ」と溜息を吐いた。
彼女は餡子があまり得意ではないのである。

24 :18:2015/04/15(水) 22:44:44.08
華の様子が変わったことに塾長も藤村も気付いていなかった。
「巨人なんかくそ喰らえや!」
「せやせや!ワイらはいらんわ!」
などと言って二人は饅頭を食べようとはしない。
さらには、
「おい、ジョニー!小此木!お前ら食ってもええで!」
「せやせや!」
ジョニーと華に対して饅頭を押し付けてきた。
食べなければならない饅頭が増えて、華の顔はどんどん曇っていった。
ジョニーだけは華の様子が変だったことに気付いていた。

25 :19:2015/04/16(木) 14:19:13.75
ジョニー鈴木は小声で小此木華に耳打ちした。
その後
「しょうがない、せっかくだし、俺が全部食べるよ」
と手を上げたのだ。
「せやせや、大阪では常識や」
塾長は喜んで、小此木の分の饅頭をジョニー鈴木の前に持ってきた。
「私が全部食べるよ」
手を上げているのは小此木華である。
「えっ! あぁ・・・」
藤村裕司は驚いたが、何かを察したようだった。
「いや、俺が全部食べるよ」
藤村裕司も手を上げた。

26 :19:2015/04/16(木) 14:20:18.66
ジョニー鈴木は小声で小此木華に耳打ちした。
その後
「しょうがない、せっかくだし、俺が全部食べるよ」
と手を上げたのだ。
「せやせや、大阪では常識や」
塾長は喜んで、小此木の分の饅頭をジョニー鈴木の前に持ってきた。
「私が全部食べるよ」
手を上げているのは小此木華である。
「えっ! あぁ・・・」
藤村裕司は驚いたが、何かを察したようだった。
「いや、俺が全部食べるよ」
藤村裕司も手を上げた。

27 :20:2015/04/17(金) 09:00:27.13
真理子も、にやりと笑うと元気よく手を挙げた。
「じゃあ、あたしが食べる!」

その瞬間、塾長はやられた!という顔をしたのをジョニーは見逃さなかった。
塾長は名残惜しそうに周囲を見渡し、ほかに人がいないことをなご確認すると、しぶしぶ手を挙げ、力なくつぶやいた。
「いやいや、わしが・・・」

すかさず4人は声を揃えた。
『どうぞどうぞ!』
うず高く積まれた饅頭は、全て塾長の前に置かれたのだった。

28 :21:2015/04/17(金) 13:15:35.96
「今日は楽しかったな」
そんなことを考えながら、ジョニー鈴木は家路を急いだ。
あの後結局塾長は饅頭をすべて平らげた。
途中でリアクションを求めるように
わざとむせていたが、妻の真理子に一喝されていた。
大阪を封印された日。
塾長は授業を続けながらも、当り散らすことはなく平穏だった。
そろばんは相変わらずつまらなかったが
塾の大阪をどう封印しようかワクワクしているところだ。

29 :22:2015/04/17(金) 21:51:57.12
ジョニーがいつものようにそろばん教室へ行くと、
いつもと雰囲気が違うことに気付いた。

理由は明白であった。今日から巨人阪神の伝統の一戦である。
試合前のはずなのに、塾の空気はすでに白熱していた
「阪神対巨人や!」
「巨人対阪神よ!」
久保夫婦はどうでもよいことで喧嘩をしていた。

「藤村はどっちだと思うねん!?」
「そりゃ阪神対巨人や!」
「せやろ!普通阪神巨人や!」
真理子はムッとして、
「華ちゃんはどっち!?」
「巨人阪神かなあ?」
「これで2対2ね!」
そして二人そろって、
「「ジョニーはどっち!?」」

30 :23:2015/04/18(土) 12:01:47.35
「ぼくはヤクルトが好きです」
「え?」
「じゃあ東京ね! 東京3で大阪2ね」
「東京の方が多いね」
「関係ないやろ!」
「せやせや!」
「結果、巨人阪神に決まりましたー!」
「みんな、哺乳類」
「ん?」
「ヤクルトだけ鳥なんですよ」
「あっ! 本当だ!」
「こうしてカテゴライズすると面白いですね」
藤村は急にインテリっぽく話した。

31 :24:2015/04/18(土) 14:18:27.65
「そんなことよりヤクルト飲もうぜ」
ジョニーはこんな事もあろうかと近所のコンビニで買っておいた乳酸菌飲料を取り出した。
今の彼にとって大切なのは野球ではない――乳酸菌だ!
「小此木さんも飲む?」
紳士的にヤクルトを差し出すジョニー。
「あ、いいの?」
いただきます、と華は微笑んでヤクルトを受け取った。
にわかに、二人の間に良い雰囲気が流れ始める。

32 :25:2015/04/18(土) 16:05:40.42
「じゃあ授業始めるで」
久保が珍しく真面目な面を見せてきた。
「まだヤクルト飲んでないのに!」
「知らんがな、始めるで」
ジョニーの訴えも久保には効かなかった。
「授業の後で一緒に飲みましょう?」
「そうだね」
こそこそと話すジョニーと華を、藤村がうらやましそうに見ていた。

33 :26:2015/04/19(日) 21:48:16.85
本日の授業は淡々と進んだ。
ジョニー鈴木は授業自体はつまらないと思い、プロ野球の結果が気になっていた。
ヤクルトが勝ってくれたら、授業後のヤクルトは美味しい。
小此木華と飲めればもっと美味しい。
そんなことを考えボーっとしていたので、藤村の小此木へのモーションには気付いていなかった。

34 :27:2015/04/19(日) 23:48:27.04
スッ……。
華の手元にそっと差し出されたそれは折り畳まれたメモ帳だった。
(? なにかしら……)
華がそれを開くと、そこに記されていたのは――裕司からの手紙だった。
その内容は、こうだ。

35 :28:2015/04/20(月) 13:02:33.98
「ヤクルトよりもうまい飲みもん持ってるで!」
華は裕司の考えていることが良くわからなかったが、無反応も悪いと思い返信した。
「そうなんだ、おいしく飲んでね」
それに対し裕司は、

36 :29:2015/04/20(月) 15:40:16.06
「一緒に飲もうや、39+25=カチワリ」
と返した。
そろばんの授業中なので走り書きが混ざっていた。
華は思わず笑ってしまった。
塾長の久保は一瞬気にしたが、授業は続行されたのでメモは気づかれていない。
「64」
華はそれだけ返した。いたずら心からだった。

37 :30:2015/04/21(火) 13:20:48.13
裕司は落ち込んだ。

華のメモが意味不明だ。64ってなんやねん!
第64代横綱の曙かっ!
強烈な張り手で1秒持たずに押し出されんのかい!
無敵すぎるで!
ひざ痛めないように注意してな!
ってそりゃ小錦や!

ツッコミはすぐできるが、恋のボケには対応できない。

それでも諦めるつもりはなく
「64」をなんとか、幼いながらに解釈しようとした。

38 :31:2015/04/21(火) 18:43:39.84
分かったで!
6と4で「む」と「し」
つまりムッシュや!
ムッシュと言えばフランス!
フランスっぽいもんが飲みたい!
つまりワインや!

ってなんでやねん!
未成年やないかい!

裕司は散々迷った挙句
「20」
とだけ返した。

39 :32:2015/04/21(火) 23:54:44.83
そして塾が終わった頃。
「ねぇ、ジョニー。これどういう意味だと思う……?」
ちょっと音量を下げた声で、困った様子の華がジョニーに話しかけた。
手渡すのは、例の祐司の「20」のメモである。
「んん……? これは……」
ジョニーの卓越した脳味噌がフル回転する。
しかし、「20」の謎は解ける気配がなく……。

40 :31:2015/04/22(水) 19:46:02.35
「いいんじゃない? 別に」
ジョニーは考えることをあきらめた。
「そうね」
華も意に介さない。
久保が早く帰るように促した。
最近特に日が落ちるのが早い。

それからは昨日学校であったことを話した。
帰り道、ジョニーは華と話せて幸せだった。離れたくないと思った。

41 :34:2015/04/22(水) 20:17:31.99
しかし現実は非情である。

次の交差点で二人は別れなければならなかった。
「じゃあ、また明日」
華がそう言って帰ろうとする。
「待って!」
ジョニーは華を呼び止めた。
華がなんだろうと思って振り返る。
「あの、ぼくは、小此木さんの……」
「アメリカ横断ウルトラクイズ!!!!」
ジョニーの首筋にチョップがジャストミートした。
裕司であった。
華のことをいつものようにストーキングしていたのだ。

42 :35:2015/04/23(木) 13:36:52.97
「うっ・・・」
ジョニーはその場に倒れこんだ。
「ジョニー! 大丈夫?」
華は倒れたジョニーに駆け寄った。介抱しようとする。
首筋をさするだけだったが、そのてはとても温かかった。
ジョニーはぼんやりする暇もなく
「藤村、グッジョブやで!」
となぜか大阪弁で思っていた。

裕司は慌てて立ち去った。
「やべー! 2人を近づけちゃった! でも告白は防いだぜ!」
とネイチャーラングエッジで思った。

43 :36:2015/04/23(木) 14:25:35.54
「くっ……藤村、良くもやってくれたな」
華の懸命な治療によって『アメリカ横断ウルトラクイズ』による深手から奇跡的に回復したジョニーが立ち上がる。
「な、なんややる気か!」
身構える祐司。そのフォームはさながら荒ぶる虎だ。
「いいだろう、お前がそう望むのならば――」
ジョニーもまた身構える。それは暗算の果てに辿り着いた、彼の必殺拳の構え。
俄かに、二人の間に剣呑な空気が流れた。
静かに煌くスカイツリーが男達を見守っている。
「お前に華ちゃんは渡さへんでぇ!」
先手を取ったのは祐司だった。

44 :37:2015/04/23(木) 18:07:37.94
裕司の拳が飛ぶ。
「ぐあっ!」
ジョニーの顎に裕司の拳が叩き込まれる。
転がるように倒れたジョニーの口から一筋の血が流れる。
すかさず裕司は追撃をするため、ジョニーのもとへ走った。
「なにくそ!」
倒れながらもジョニーは裕司を蹴り、腹にジョニーの足が食い込んだ。
「うっ!」
裕司はがっくりと膝を落とした。

45 :38:2015/04/24(金) 13:06:11.90
「ここで力水や! カチワリを飲むで!」
裕司はカチワリを取り出し飲んだ。
「よっしゃー! いてまうぞ!」
裕司のフェイントを駆使した拳がヒットした。
連打に防戦一方のジョニー。
「なんとか隙ができないものか・・・」
ガードの下でジョニーはそう考えていた。

46 :39:2015/04/25(土) 23:25:42.56
「ジョニー頑張って!」
華の声援が飛ぶ。
「なんでや!華ちゃんこっちにも応援してや!」
裕司はたまらずに華の方を向いてアピールしていた。
ジョニーは一瞬の隙を見逃さなかった。
「これはチャンスだ!」

47 :40:2015/04/26(日) 00:08:26.09
左を向いた裕司に、ジョニーの渾身の左ストレートが炸裂する。
アッパー気味に裕司の右あごに。
「シンガポールマーライオン!」
ミスッという低い音の次には、ゴツッという両膝がアスファルトに着く音が聞こえた。
「右利きのふりをしておいてよかった」
ジョニーはそうつぶやきながらも、頭が地面につきそうな裕司を抱えた。

48 :41:2015/04/26(日) 23:02:29.64
一方の祐司は――
脳が揺れて混濁とした意識の中、世間で言う『走馬灯』というものを見ていた。
幼い頃の自分……

(そうや……俺は……ナンバーワンになりたかったんや……誰にも負けたく、なかったんや……)

そして目を覚ませば、目の前にはジョニーが。
「おっ。起きたか、タフだな」
と、ジョニーは苦笑して「立てるか?」と祐司に問うた。

49 :42:2015/04/27(月) 10:56:04.83
「膝が・・・」
膝が笑っている。裕司は立てなかった。
「肩を貸すよ。どうだ?」
ジョニーは裕司の肩の下に体を潜り込ませた。
ふたりはゆっくりと歩き始める。裕司の家の方向へ向かっている。
「今日のそろばん難しかったな」
「そうでもないで。わいはナンバーワンになる!」
喧嘩をしたら、ダチである。

50 :43:2015/04/27(月) 11:46:32.41
「二人とも……」
華は二人が裕司の家へ向かった後も喧嘩の場所に立っていた。
「私のこと、忘れてる……」
もう戻ってくる様子はなかったので、華は諦めて帰った。
その日の華は枕を濡らした。

そして次の日、

51 :44:2015/04/28(火) 00:10:38.13
「私は……悲しみの修羅となった……!」
そこにいたのは、今までのたおやかな少女ではない。
強靭なる羅刹となった華だった。
「愛などいらぬ……!!!」
血の涙を流す華があてどなく町を走り出した。
ああ、華は悲しみのモンスターとなってしまうのか。

52 :45:2015/04/28(火) 00:28:29.55
「もうよそうや! そんな華ちゃん、俺は見たくないで!」
裕司は華の凶行を止めようと前に立った。
裕司は、自分の好きな華に戻ってほしかった。
馬鹿なことをしてほしくない。
華自身が後悔する前に自分が止めなければ、そう思った。

「退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」
華は走り出した足を止めることなく、猛スピードで裕司に追突した。
裕司は宙に浮き、地面に激突した。
その衝撃は軽トラックの方が幾分マシだと思えるほどだった。
「女の車の運転かい……」
裕司はなんとか華の言葉に突っ込んだ。
そして、
「ジョニー……後は頼んだで……」

53 :46:2015/04/28(火) 09:10:33.48
ジョニーはのんびりおやつを食べていた。
お母さんがクッキーを焼いてくれた。
ジョニーは甘くてミルキーなお母さんのクッキーが大好きだ。

「ジョニー、そろばん教室にも持っていきなよ」
人数分に小分けして、かわいいリボンまで付いた袋。
それをリュックに入れて、ジョニーはそろばん教室へ急いだ。
玄関ではお母さんが笑顔で見送ってくれた。

「袋に入ったクッキー、売っているやつみたいだ」
ジョニーは早くそろばん教室のみんなに会いたかった。

54 :47:2015/04/28(火) 15:36:25.18
今日もいつもと変わらない日なんだろう。
スカイツリーが見える景色、塾長と祐司が関西弁で盛り上がり、塾長の妻がそれにキレ、なんだかんだで騒がしくて、隣には微笑む華がいて……。
そうだ、今日も、いつもと変わらない、平和で愉快な日なんだろう……。

そう思って塾に辿り着いたジョニーは。

「なんだよ、これ……」
瓦礫と化した塾。
その頂に立つ、修羅と化した華。

かち合った視線――華とは思えぬ覇気を纏った眼差しに、力の抜けたジョニーの手からクッキーの袋が離れ、落ちた。

55 :48:2015/04/28(火) 23:27:49.02
「ふううん!」
華がクッキーを貫くように見た。
それだけでクッキーは粉々に砕け散る。
「小此木、さん?」
ジョニーは恐る恐る尋ねた。
そこにいる修羅は、華の髪型をしていた。
しかしそれ以外に華だと認識できる部分がなかった。
掘りが深すぎる顔、筋骨隆々の腕、堂々とした体躯。
どこをとってもジョニーの思い出の中にある華の姿はなかった。

「うぬも我が覇道に立ちふさがろうとするのか? ジョニーよ」
華の口調はジョニーの知っている華とは似ても似つかなかった。

56 :49:2015/04/29(水) 09:56:00.76
「そうだ! 華ちゃん! いや、華ちゃんの姿をした鬼め!」
およそジョニーは小学生とは思えない台詞で
華に似た鬼に向かって激昂した。
「俺も、あと2回変身を残しているんだぜ。復活のJ!」
ジョニーは上空にジャンプした。

ジョニーのようなものが降りてきて地面に衝突した。
ドゴォン!
粉塵が舞い、煙がもうもうと上がる。
ジョニーは革ジャンにギターを持っていた。
「第二形態! ジョニー大倉だ!」

57 :50:2015/04/29(水) 22:37:32.37
「この形態でいられるのは3分だけなんだ……! 速攻でいくぜ!」
ジョニーはギターをジャガジャガ掻き鳴らしながら華へ猛然と突撃した。
(は、速――)
その凄まじい速度は華の目を以てしても補足出来ぬほど。
次の瞬間には、ジョニーは華の懐に潜り込んでいた。
「喰らえ必殺――」
ジョニーがギターを構える!

「ギターキック!!」

それは音速を超えた剃刀の如き鋭さを持つローキックである!

58 :51:2015/04/29(水) 23:35:45.31
「ギター使わんのかい!」
ギターキック並みに鋭い突っ込みを入れたのは久保であった。
何とか生きていたのだ。
隣には妻の真理子もいる。
「このままじゃ、ジョニーは勝てない……」
真理子が呟いた。
「どういう意味や!? ジョニーが勝つにきまっとるやろ!」
久保は最後の希望であるジョニーに否定的な意見が許せなかった。
「見て」
真理子はジョニーと華の方を見て言った。
久保がジョニーと華の様子を見ると、

「なにぃ!?」
ジョニーの変身が解けていた。
ジョニーのギターキックはただのキックに成り下がり、華にダメージを与えていない。
逆に、華に追い詰められていた。
「なんでや!? まだ3分経ってへんやろ!」

59 :52:2015/04/30(木) 09:01:01.58
華は妖艶な微笑みを浮かべた。ジョニーのキックが当たった場所を、ポンポンと手で払った。
「私は帰国子女よ。英語の攻撃なんて効かないわ」

久保は驚いたと同時に、思い出した。
華は日本の文化に馴染むために、そろばん教室に通っているのだ。
「はっ! そうだジョニー! 日本語の攻撃はないんかい!」
久保はあらん限りの大声で、ジョニーに向かって叫んだ。
「あとひとつの変身は和風なんでしょ? ジョニー!」
真理子も叫んだ。ふたりは血こそ流れていないが、ぼろぼろだ。

(ジョニーって名前の時点で無理だよ・・・)

60 :51:2015/04/30(木) 23:47:41.75
「でもやるしかない! 変! 身! 和風バージョン!」
ジョニーの体は光に包まれた。
ボオォオンッ!!
突如、久保のスカウターが派手な音を立てて爆発していた。
「アホな! スカウターが壊れたやと!?」
ジョニーは和装に身を包み、洞爺湖と刻まれた木刀を手にして

61 :52:2015/05/01(金) 09:46:06.49
「やった! 和風に変身成功だ!」
歓喜に打ち震えていた。

久保と真理子は手を取り合って喜んだ。
「和風や! 頭には通天閣がそびえてるで!」
「あっ! お腹は東京ドームね!」
ジョニーは、ごちゃまぜなご当地キャラのような姿になっていた。

久保は名案を思い付いたかのようにジョニーに言った。
「ジョニー! 名前も和風に変えんかい! もうジョニーじゃ勝てんで!」
真理子も同意した。
「そうよ! 日本男児らしい名前にするのよ!」

その声にジョニーは困惑したが、華はすでにその場にいなかった。

62 :55:2015/05/01(金) 15:54:11.71
「華ちゃんは!?」
あたりを見回すが、華の姿はない。
「後ろや! 志村……じゃなくて、ジョ、助兄(じょにい)! 後ろ後ろ!」
久保が勝手にジョニーの名前を和風に改変した。

ジョニー、もとい助兄が振り向くとそこには――!? 

63 :56:2015/05/01(金) 16:15:04.59
「おい、何書いとんねん」
久保塾長に頭を小突かれて、ジョニーは我に返った。

「いや、これは・・・」
慌ててノートを隠そうとしたが、時すでに遅し。
ジョニーがコツコツと書いてた小説は、塾長の手の中だ。
「何々・・・『強靭なる羅刹となった華だった・・・』』? なんやこれ、華ちゃんがえらいことになっとるな」

顔を真っ赤にして手を伸ばすが、所詮大人と子供。
片手であっさり御されてしまう。

「ギターキックかあ・・・。なるほどなあ」

そこへ、騒ぎに気付いた華たちが集まってきた。
「え〜、何々、私がどうしたの?」

「いや、それがな・・・」
嬉々としてしゃべろうとしたものの、ジョニーの目に涙がたまってるのを見て、塾長は口をつぐんだ。
さすがにその程度の分別はつくのだ。
「わかったわかった。そないに明石のタコみたいに顔真っ赤にせんでええ。ただ、後で塾長室にノート取りに来い。ええな。」

ジョニーは黙って頷いた。声を出したら、涙があふれ出しそうだったからだ。
「みんな、席に戻れ。計算中は席を立たない。大阪では常識や」

華も裕司も、興味津々だった他の生徒も、しぶしぶ席に戻り、計算の続きを始めた。
ジョニーはしばらく唇を噛んでいたが、やがて鉛筆を手に取り、みんなと同じように数字の世界に没頭していった。

64 :57:2015/05/01(金) 20:45:53.02
ジョニーには密かな夢があった。誰にも打ち明けてない夢があった。

小説家になりたい――

幼い頃から少しずつ温めていた夢だった。
けれど塾長のニヤニヤした顔を思い出すだけで死にそうになる。
(俺に才能なんかないんだろうか……)
ジョニーは重い溜息を吐いた。
授業なんて頭に入らず、みやったのは窓の外。スカイツリーが輝いている。
(小説みたいな世界ならよかったのに……)

65 :58:2015/05/02(土) 01:47:57.78
ジョニーは授業が終わった後、塾長室に行ったが久保はいなかった。
「すいませーん」
呼びかけるが返事はない。
「塾長?」
そこには、塾長の姿があった。
血まみれで倒れている塾長はすでに死に絶えていた。
慌ててジョニーが塾長に近づいたその時、
「きゃあああああ!!!!」
いつの間にか華がジョニーの後ろに立っている。
「ジョニー君、なんで……」
華はジョニーと目が合うと逃げ出した。

66 :52:2015/05/02(土) 15:35:03.82
「華ちゃん! 違うんだよ!」
ジョニーは追いかけようとしたが、塾長を放っておくわけにもいかない。
走り去る華に追いすがりつつ、塾長を改めて見た。

白いワイシャツが真っ赤に染まっている。
何とも言えない血の匂いが立ち込め、空気を澱ませている。
その血は既に塾長の体から出きったようで、あらかた固まっている。

「だだだだだ、だれかに言わなきゃ」

ジョニーは塾長の真理子を探しに駆け出した。

67 :60:2015/05/02(土) 17:47:31.05
「ふ、藤村ァ!?」
真理子を探しに行ったジョニーであったが、かばんを教室に置きっぱなしだったことを思いだした。
いったん教室に戻ると裕司が倒れていたのだ。
久保と同じように血に染まった裕司はピクリとも動かない。
駆け寄ったジョニーであったが、すでに息がないことを悟っていた。
その藤村の手に、何かが握られていることがわかった。それは――

68 :61:2015/05/03(日) 23:01:58.98
「ふぅ・・・」

塾長の久保はここまで書いて筆をとめた。
ジョニーの小説、それは小説と呼べるか分からないが、ジョニーにとっては小説と呼べるもの、に触発された。
塾長の久保も小説家を志していた。
学生時代は何度も出版社に持ち込んでは、けんもほほろに突っ返されたものだ。
青春の苦い思い出がよみがえった。

なんとなくジョニーの小説のテイストを真似たものの、もう続かない。

69 :62:2015/05/04(月) 19:10:20.52
「やっぱり、わしには才能がないんやろか……」
久保が珍しく弱音をはいた。
「そんなことないですよ」
久保の後ろから声がする。
「誰や……?」
久保が振り向くとそこにはジョニーがいた。

70 :63:2015/05/04(月) 23:17:25.94
ジョニーの体が震えている。
いや、違う、あれは――

「なっ……!?」

久保は息を呑んだ。
ジョニーはソロバンに、まるでローラースケートの如く乗っていたのだ。
その絶妙なバランス感覚。震えているのは全力でバランスを取っているからだ。

71 :64:2015/05/04(月) 23:36:01.31
ガシャンッ!
ジョニーは盛大にずっこける。
ソロバンが地面をひとりでに走り、やがて止まった。
ジョニーはすぐに起き上がると、またもやソロバンに乗ろうとする。
乗ったかと思ったが、すぐに転倒した。
「な、なんや……」
久保にはとてもできないと思った。
ソロバンに乗ることなんかできっこないと。
しかしジョニーには諦める様子はない。
再びソロバンを乗りやすいようにセットする。
よく見れば、ジョニーの体にはあちこち痣が出来ていた。
それはソロバンに乗り始めたのが今日や昨日ではないということだった。

出来る出来ないではなく、やるかやらないか。
ジョニーの挑戦に、久保は胸が熱くなってきた。

72 :65:2015/05/04(月) 23:57:10.32
熱くなってきたのに、裏腹に無口になっていった。
応援は、しないでおこう。
ただ見守るだけだ。
そして、ジョニーがそろばんに乗りこなせるようになったら。
応援なしでできるようになったら。

おれも、もう一度小説を書こう。
久保はジョニーに応援されているような気がした。

73 :66:2015/05/05(火) 11:30:36.78
塾長室から見えるスカイツリーはライトアップされている。
夜はとっぷりと更けていて、終電はとっくに発車していた。
こんな時間まで何アホなことしてんねん!――言おうと思ったがやめた。
そんな時間までジョニーの挑戦を飽きもせずに見ていたのは久保自身だ。

ついにジョニーはソロバンを乗りこなしたのだった。
「やった! やりましたよ塾長!」
今何時なのかわかっているのかいないのか、ジョニーは深夜には不適切な喜びの叫びをあげる。

74 :67:2015/05/05(火) 13:38:35.98
「ジョニー、お前っ……!」
こみ上げる思いに久保の瞳から熱い涙が溢れる。
努力の尊さ。諦めない事の美しさ。
「やりました……ついにやりましたよ!」
「凄いじゃないかジョニーっ……!」
よくやった、なんて言葉を何度も繰り返しながら塾長は生徒と熱い抱擁を交わした。

75 :68:2015/05/05(火) 17:31:25.59
「どないしよ」
久保が呟いた。
深夜遅くにジョニーを家に帰すのは気が引けた。
かといって、塾に残してほなさいなら、で終わる訳にもいかない。
残る選択肢は、
「ジョニー、わしの家に泊まっていくか?」

76 :69:2015/05/06(水) 12:39:25.62
ジョニーは久保の家に泊まることにした。
幸い、ジョニーの両親は久保と知り合いだった。そして明日は休日。
久保の自宅はそろばん教室の2階だった。
妻はお風呂を沸かしておいてくれた。

ジョニーがお風呂に入っている間、久保は妻の真理子にいきさつを話した。
そろばん塾を続けながら、小説をもう一度書きたいことも。
そろばんの天才であるジョニーを、そろばん講師に育てようと思っていることも。

77 :70:2015/05/06(水) 22:14:53.90
「それで、あなたは満足なの?」
真理子の言葉に久保は、二の句が継げなかった。
「あなたは、片手間で小説を書きたいの?」
真理子がもう一度言った。
今度の意味は久保にも分かった。
つまり、
「そろばん塾をたたんで、小説に専念した方がええっちゅうこっちゃな」

78 :71:2015/05/06(水) 23:26:23.03
深刻な雰囲気が流れる一方、風呂場のジョニーは――
「ばばんばばんばんばん♪ ハ〜ァびばのん」
ノリノリでバスロマンしていた。
「水も滴るいい男♪ フーゥ!」
ジョニーはお風呂に入るとテンションがちょっとアレになるタイプなのであった。
と、その時である。
ジョニーは僅かに開いた窓から誰かの視線を感じ取った!

79 :72:2015/05/07(木) 00:20:46.03
「あ、あかん! バレたかもしれん! 俺が藤村裕司だってバレてもうたら一巻の終わりや!
 ここは逃げるで! 漢藤村、ジョニーになぜか惚れてもうたとバレるわけにはいかへんのや!」
覗きの犯人はご丁寧に身分を証明しながら逃げて行ったようだ。
明日藤村にあったらなんて言おう……
「夜霧よ今夜もありがとう……」
テンションも別な方向にアレになっていた。

80 :73:2015/05/12(火) 12:45:49.79
さて髪も体も洗ってスッキリしたジョニーは風呂から上がった。
「あーサッパリした〜」
ジョニーは髪を拭き、体を拭き……ここでハッと気が付く。
「そうだ、着替えどうしよう……」

81 :74:2015/05/12(火) 12:47:25.70
何分、急に塾長の家に泊まる事になったのだ。
着替えなんて持って来ている筈がない。
一応としては、今日着ていた分を着る事もできるのだが……折角風呂で綺麗にサッパリとしたのに、一日着ていた服をもう一度着るのも、何だかなぁ……。
ジョニーは結構綺麗好きなタチなのであった。

82 :75:2015/05/12(火) 12:50:17.14
と、そこへ、扉越しに声をかけてきたのは真理子である。
「ジョニー君? これ、あなたに『お届けものです』って」
ちょっとだけ開いた戸の隙間から差し出されたのは、パジャマに下着と着替え一式であった。
「え? これ、誰からですか?」
「あれ、ご家族の方じゃないの?」
「え、え?」
「なんだか帽子を目深に被っておられたから、顔は良く分からなかったんだけど……」
「そうですか……」

83 :76:2015/05/12(火) 12:52:10.49
なんにしてもラッキー……いや、ちょっと不気味かもしれない。
ジョニーは先程の風呂場の出来事を冷静に思い出していた。
(そうだ……俺、なんか、シャワーシーンを覗かれてなかったか……?)
あの時は風呂場でテンションが変になっていたが、よくよく考えれば一大事である。
(確か……犯人は何か言っていたような……)
ジョニーは必死に犯人が言っていたことを思い出そうと試みた。

84 :77:2015/05/13(水) 13:30:03.48
でも頑張っても思い出せないので、取り敢えず服を着ようそうしよう。
……と思ったけれど、見知らぬ人からいきなり渡された服を着るのもなんだかなぁ……。

考えに考えた挙句、ジョニーは結局さっきまで来ていた服を着る事にした。
幸いにして明日は休日、学校もない。
久保の家に長居をするのも失礼だろうと考えたジョニーは、「明日は早く起きて早く家に帰ろう」と思ったのであった。

85 :78:2015/05/13(水) 13:32:16.04
そして簡単な食事を済ませ、空き部屋に客用の布団を敷いてもらい、ジョニーは久保夫妻へ「おやすみなさい」を告げると部屋の電気を消して布団の中に潜り込んだ。
真っ暗闇の中で真っ黒い天井を眺めつつ、ジョニーは眠気にまどろみながらも再度、さきほどのことをかんがえていた。
自分の風呂シーンを覗いていた犯人が言い放った言葉についてである。

86 :79:2015/05/14(木) 11:12:22.45
『あ、あかん! バレたかもしれん!』

(確か……関西弁を喋っていたような……)
そしてこの後の言葉が上手く思い出せなかった。「ここは逃げるで!」と言っていたような気はするのだが。
(同じ関西弁使いなら……藤村ならなにか知っているかも……)
などと思いながら、ジョニーの意識は眠りに落ちていった。

87 :80:2015/05/14(木) 11:15:47.48
翌朝。
「折角やから一緒に食べようや」と真理央の願いから、ジョニーは久保夫妻と朝食をとっていた。
「おかわりはいっぱいあるからね〜」
真理子はいつもより賑やかな食卓に嬉しそうだ。
ふるまわれたのは、白米、味噌汁といった、日本の極一般的な朝食である。
「お味はどう、ジョニー?」
「美味しいです、ありがとうございます」

88 :81:2015/05/14(木) 11:18:16.00
真理子にそう答えたジョニーは、しばし箸を止めた。
言うまいか悩んでいたが、念のためと思い、口を開く。
「あの……。実は」
言おうとしたのは勿論、昨晩の『覗き魔』についてだ。あの覗き魔はひょっとしたら久保夫妻のどちらかが狙いだったのかもしれない、そう思うと彼らの安全のためにも言うべきだとジョニーは判断したのだ。
けれど、「ちょっと待った!」と真理央。

89 :82:2015/05/15(金) 10:49:06.08
「え、どうしたんですか?」
一体なんだろうとジョニーは真理央を見やり、緊張しながら彼の言葉を待った。
「うむ……」と頷いた真理央は箸を置き、一間を空ける。
そして徐に言い出したのは、こんな言葉だった。
「実は……もう、そろばん塾を畳もうと思っとるんや」
「なんですって!!?」
ジョニーは思わずと声を大きくした。

90 :83:2015/05/15(金) 13:01:02.43
「そんな……でも、一体全体どうして?」
「急な話やと思っとる。ジョニーが驚くのもしゃあない話や……」
でもな、とジョニーを見返す真理央の目は真剣だった。
「わしは……小説家になろうと思う」
「小説家に……!?」
「せや」
真理央は深く頷いた。

91 :84:2015/05/15(金) 13:03:33.09
「そうですか……」
ジョニーは俯く。
真理子が二人を見守る中、しばし沈黙が流れた。
「でも、それが塾長の夢なんですよね。だったら、俺……応援します、塾長のこと!」
顔を上げたジョニーはそう言いきった。
「ジョニー……!」
「そろばん塾がなくなるのは、そりゃ寂しいけど……皆に会えなくなる訳じゃないですしね。それに、みんな良い奴ですから、きっと塾長の夢を応援してくれるはずです」
「せやろか、身勝手な大人やと思われへんやろか」
「何言ってるんですか塾長、あなたの生徒ですよ」
「そうか……」
と、真理央もどこかはにかむ様子で微笑んで見せた。

92 :85:2015/05/16(土) 13:09:03.70
「それで、ジョニーが言いたかった事は?」
そう尋ねたのは真理子である。
ああそうだ、と思い出したジョニーは「実は」と再度改まった。
「昨日の夜なんですけど……風呂場に覗き魔が出たんです」
「な、なんやて!?」
ジョニーの告白に真理央は思わず席を立ちながら聞き返した。
「僕が彼に気づいたら、『あ、あかん! バレたかもしれん!』って関西弁を言い残して走り去っていったんです……」
「ほんまかいな……こりゃ警察に届けとかなあかんな」
「覗き魔だなんて、いやぁねぇ」
久保夫妻は険しい表情だった。

93 :86:2015/05/16(土) 13:12:35.95
さて、朝食を食べ終わったジョニーは、「それでは俺はこれで」と久保夫妻に頭を下げた後、自分の家へと帰った。
「あらおかえりジョニー。久保先生から電話で事情はおうかがいしてたわよ」
母親は笑顔で息子を出迎えた。
ジョニーは「ただいま」を母親に返しつつ、
「あのさ……久保塾、たたむんだって」
「ええ!?」
「久保先生、小説家になりたいんだってさ」
「あら、まぁ、そう……」
母親のそんなリアクションを聞きながらジョニーは思った。
次にそろばん塾に行く日で、久保塾で過ごす日々は最後なのかな、と。

94 :87:2015/05/16(土) 13:18:35.50
そして最後の日はやって来た。
そこに藤村祐司の姿はなかった。
「あれ? 藤村は?」
「藤村君、不法侵入だとか色々あって警察に捕まったって……なんでも、他人のお風呂を覗いてたとか」
ジョニーにそう答えたのは華だった。
(まさか……あの時の覗き魔は……)
ジョニーは咄嗟にそう思ったが、まさかアイツに限って、と浮かんだ考えを頭を振って振り払った。
なんにしても、一人足りないが、今日は最後の日である。
全ての生徒達は事情を知っている。そして塾長を否定するものはいなかった。

塾での時間はいつも通り進んでいった……暗算マスターのジョニーは物足りなさげに授業を受け、華は真面目に取り組み、真理央は昨晩の阪神の話をはじめ、すると真理子が巨人を推してくる……
賑やかで、ささやかな時間は、そうやって最後の時を迎えた。

久保塾はなくなるけれど、もう二度と会えない訳ではない。
久保塾で過ごした日々は、間違いなく彼らにとってかけがえのない宝物である――。

95 :88:2015/05/18(月) 09:45:53.05
久保塾の看板が取り外された教室の前を通るのは、しばらく辛かった。

やはり思い出してしまうからだ。あの日々を、そして藤村のことを。

結局、藤村が逮捕されたというのはデマだった。
不法侵入で事情聴取されたというのも、あながち嘘ではないらしいが、このことになると大人はみんな口をつぐんでしまう。
口さがない女子たちは、憶測だけで噂を広め、そのたびにジョニーは藤村をかばっていたが、やがてみんなの関心は次の噂にうつり、藤村の話題が出ることはほとんどなくなった。

結局、真相は闇の中だ。
ジョニーにとって残ったのは、親友が忽然と姿を消したという事実だけだった。

女子たちの噂ににいちいち反論しているうちに、ジョニーはどこか孤立した存在になり、華とも少し疎遠になっていた。
華自身は噂に加担していないが、やはり学校というコミュニティの中では、そうせざるを得ないのだろう。

96 :88:2015/05/18(月) 10:11:50.88
あれから2か月。
今日もジョニーは孤独感を胸に、下校していた。

帰ったら何をしよう。
考えてもむなしいだけだ。
ゲームもテレビも、なんだか幼稚なものに思えた。

久保塾での、血の通ったやり取りとくらべると、どうしても見劣りしてしまうからだ。

(あの角を曲がったら・・・元・久保塾か。)
いまだに、そこを通ると胸がざわざわする。

たいてい遠回りしてこの道は避けるのだが、なぜだか今日は通りたい気分になったのだ。

(もう大丈夫かと思ったけど・・・まだまだだな。)
そう思いながら、角を曲がる。

見たくないと思っても、やはりあの建物に目が行ってしまう。

・・・ふと目をやって。
フリーズする。
え?
あれ?
なんで?
どういうことだ?

そう、建物には、あの頃と同じ久保塾の看板がかけられていた。

97 :88:2015/05/19(火) 17:44:26.88
>>96の通し番号は89でした。すみません。

98 :90:2015/05/19(火) 19:52:53.28
「久保先生!?」
息急き切って塾の玄関へ飛び込んだジョニーは、その光景を目の当たりにして息を呑んだ。
「こ、これは……どういうことだ」
かつてそこに並んでいた机は一切取り払われ、むき出しになった板の間の上には黒装束姿の者たちかわズラリと立ち並んでいたのだ。
「ジョニー」
ジョニーの名を呼び、黒の集団の中から一人、歩み寄ってきた体格の良い男。
「久保先生……」
覆面をしていてもその声でわかる。
「先生、一体これは……」ジョニーは唾を飲み込んで、言葉を続けた。
「この人たちは一体誰なんですか。僕たちの算盤塾はどこに行ったんですか。先生は、小説家になるんじゃなかったの。なんで、こんな……こんな、忍者みたいな人たちが塾にいるんですか!?」

99 :91:2015/05/19(火) 21:09:42.74
「そろばん塾は仮の姿……」
久保先生は静かに切り出した。
居並ぶ黒装束の男たちは、体を先生に向け、泰然として話を聞いている。
その場で動揺をあらわにしているのは、ジョニーだけだった。
「仮の……姿……?」
「そう。我々はそろばんという古の算術を通して、誰が我々の仲間になるにふさわしいか見極めていたのだよ」
「え?」
「そして、選ばれたのが、君だ。ジョニー、おめでとう」
「え、え?」
「華くん」
「はい」
「え、え、え?」
すでに黒装束に身を包んだ、華。
「彼女も、選ばれし勇士だ」
「え、え〜!?って、何が起きるんですか〜!!?」
驚きを隠せないジョニーに、すっと黒装束が差し出された。
「ジョニー。以前、君の風呂を覗いた裕司。あれは君の忍びの適性を測るための試験の一つだったのだよ。気配を消していた裕司を、君は見事に見破った」
「……」
「君に任務を与えよう。裕司と華とチームを組むがいい」
「裕司……。でも、裕司は行方知れずで!」
「ジョニー」
「華」
「 裕司はいつもあなたのそばにいたわ」

100 :91:2015/05/19(火) 21:16:02.63
「それは、俺が代わりに答えたる」
 久保の隣に進み出てきた小柄な少年は、覆面を取るとニッと笑って見せた。
「藤沢!」
「藤沢ちゃうわ。藤村や、藤村。今、本気のぼけやったろ。おまえ、何年俺と友だちやってんねん」
「そんなことはどうでもいい。それより、なんなんだよこれ。なんでそろばん塾が忍者まみれになってんだ」
「それはやな、ジョニー。実はこのそろばん塾、俺が受け継ぐことになったんや」
「なんだって!?」
「塾長は、本当はおまえに跡目を継がせる気やった」
「跡目って……俺なんの関係もないんだけど」
「けど、おまえはそろばんより暗算が得意なんがわかって。実はそれがわかったのも、俺がおまえを見はっとったったからなんや」
「見張ってたって、なんで」
「実は、俺、先祖代々続く、忍者なんや」
「ええっ!? 度肝抜かれたけど、今。それ、マジバナかよ!?」
「せや。おまえには嘘はつかへん」
「絶句だわ」
「絶句、言うてるやん」
「意味分かんねえよ。どういうことだよ」
「だから、俺は久保さんに雇われた忍者やったんや。そんで、おまえが後継にふさわしいかどうか調べていた。
けど、おまえは暗算派てことがわかったから、久保さんも塾の後継は諦めて小説家になろ思ったんやろ。けど、忍者小説書いてるうちに、忍者になりたい思ったらしくてな、
俺がこの塾ついで忍術教えることになったんや。まあ、それだけやと稼げんから、そろばん塾も
続けるけどな」
「それじゃあ、今日からここはそろばんあんどにんじゅつ塾!?」
 

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